21世紀の基盤 -3号-

1人の女の子に見た合唱のしぐさ

生活に溶け込んだ日本の心

日本の社会から道徳や倫理観がしだいに喪失していることにむなしさを感じている人が多い。
私もそんな中の一人である。特に、若い人たちの振る舞いには我慢がならない事が多い。満員の電車の中で自分だけがゆったりとした座席のスペースを確保して悠然としているのを良く見かける。姑息なのは、隣の座席に一人分というスペースではなく半人分の空白を意識的につくって他の人が、席を詰めてください、というには空白が狭いのだ。
少しだけどちらかに尻を動かせば他の人が座れるスペースが作られるのに。無頓着なのか、意識的なのか。いずれにせよ他の人たちとの関係には係わりをもとうとしない自己中心の世界が蔓延している。
そんな中で少しほっとする光景を見た。
先日、出張で東京に行って渋谷のホテルに宿泊して、翌朝そのホテルで朝食をとっていたときの事である。
私の右斜め前におそらく20代の始めだろうか、いかにも野放図な服装と決して行儀が良いとはいえない女同士の二人連れが食事をしていた。バイキングだから日本食ではなかったように思う。片方の手はだらりと下げたまま、右の手だけで食事をフォークでつつきながら口に運んでいる。決しておいしそうな食べ方ではなく、義務のように食べている。よく見かける若者の食事風景だ。
彼女らはそのうちに食事を済ませて席を立ち始めた時である。そのうちのあまり行儀が良くない女性がテーブルに正対して背中をすっと伸ばしたと同時に両手を合わせて合掌をしたのである。そして席を立つとイスをきちっとテーブルに収めて立ち上がっていったのである。
一瞬の事であった。予想もしなかった立ち振る舞いであった。全くしぐさのぎこちなさは無い私はじっと彼女の後姿を見ていた。
そしてすがすがしい思いが込み上げてきた。家には頑固なおじいさんがいて食後の合掌を家族の礼儀作法として行っているのだろうか。
倫理や礼節は日常の中に生かすことの大切さを思う。日本の心の美しさを実感した。

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